健康を維持する上で、喫煙ほど害のあるものは他に見当たりません。
高血圧や糖尿病などの治療をがんばってしている一方で、喫煙してる人がいらっしゃいますが、喫煙したままでは、折角の治療も効果が乏しくなります。禁煙は病気の治療や健康維持のために、何よりも重要です。
下のグラフは日本人を対象とした調査研究結果ですが、喫煙が最も重要な予防可能な死亡の原因であることがわかります。
いろいろな情報があふれていると思いますが、まずは自分にとって健康がどれくらい重要なことであるかを確認することが必要でしょう。
自分自身のため、家族のため、仕事のため、目的のため、など人それぞれに理由がありますが、健康が自分にとって是非必要である、ということが納得できれば、禁煙できる可能性が高いと思います。なぜならば、喫煙は健康を自ら害する行為ですから。
自分は喫煙したままでも健康でいられると思っている人がいらっしゃったら、それは間違いではないかもしれませんが、多くの人には当てはまらないことは確実です。
たばこを吸うのをやめて、たばこを買ったり、あるいは人からもらったりしなければよいのです。それだけのことですが、これを自力で達成できるのは、多く見積もって10人に1人です。それくらい難しいということを知った上で禁煙に臨むことは悪いことではありません。
1)禁煙するとこんないいことがる、あるいは逆に喫煙するとこんな悪いことがる、のかを知る(禁煙の「味方」を知ろう)
①「禁煙するとこんないいことがる」の例
✔たばこを1日に1箱吸う人がやめると、月に400円x30日=12,000円、1年では12,000x12=144,000円の出費が減る
✔禁煙して5年もたてば肺がんの危険が半分程度に減る
②「喫煙するとこんな悪いことがある」の例
喫煙する人は喫煙しない人に比べて2倍くらい糖尿病になりやすい
2)禁煙の妨げになるものを知る(禁煙の「敵」を知ろう)
①たばこを吸う癖
食後や一仕事の後には一服しないといけない、などという癖やこだわりは意外と厄介です。割り切り、発想の転換、パターン変更など、自分なりの解決法が必要です。
②ニコチン依存症
ニコチンの薬理作用がなくなると体に不具合が生じる状態です
現在ではこのニコチン依存症に対して薬物治療が認められています。この薬物によるニコチン依存症の治療により禁煙の成功率は2,3倍に改善します。
下にニコチン依存症かどうか、見極めるためによく使われる問診票を示します。質問のうち、5つ以上の質問に対して「そうだ」と思う人には、ニコチン依存症に対する薬物治療を併用した禁煙(いわゆる禁煙外来)をお勧めします。(実際に保険診療を使って禁煙外来で治療できるかどうかについては、受診時の総合的な判断になります。)
① 自分が意識していたよりもずっと多くのたばこを吸ってしまったことが、度々ありますか?
② これまでに禁煙や本数を減らそうと試みたけど、できなかったことがありましたか?
③ 禁煙や本数を減らそうとしたときに、たばこがとても欲しくなりましたか?
④ 禁煙したり本数を減らしたときに、次のどれかがありましたか?
イライラする 神経質になる 落ち着かない
集中できない 頭痛がする 眠くなる
胃のむかつき 心拍が遅くなる
食欲または体重の増加 手の震え
抑うつ(ふさぎこみ)
⑤ ④で挙げた症状のために再びたばこを吸ったことがありますか?
⑥ ひどい病気になった時に、たばこが悪いとわかっていても吸ったことがありますか?
⑦ たばこは健康に悪いとわかった後も吸いましたか?
⑧ たばこは精神的に悪影響があるとわかった後も吸いましたか?
⑨ たばこに依存していると感じたことがありますか?
⑩ 仕事や社会活動をさぼってたばこを吸ったことがありますか?
(これらの質問は基になっている文献Kawakami N, et al Addictive Behaviors, 24: 155-166, 1999を自分なりに忠実に訳したものであり、よく出回っているものとは少し違うところもあるかもしれません)
自分のこれまでの禁煙外来の経験では、禁煙外来受診者の2人に1人が禁煙外来中(3か月間)に禁煙でき、禁煙できた人のうち3/4の人は1年後にも禁煙を続けていました。
禁煙できたら禁煙を維持することが重要ですが、これがまた難しいところです。
うまく禁煙がつづけられるために、最も重要なアドバイスを一つだけしますと、
「これからは決してたばこに触らないでください!」